|
Cyrix Cx5x86はサイリックスが、1995年8月に発売した、i486とのソケット互換性を備える32ビットx86互換CPUである。AMDが開発したAm5x86と共にもっとも高速なi486互換CPUの1つとして知られる。 == 概要 == Cx486シリーズの後継・上位機種として、インテルPentium互換プロセッサであるCyrix 6x86(開発コード名M1)のコアロジックのサブセットと486系プロセッサ用フロントサイドバス (FSB) インターフェイスを組み合わせて開発された。 開発コード名はM1scで、外部FSBは32ビット幅であるが内部データバスは64ビット幅となっており、命令パイプライン技術やスーパースケーラ、128エントリの分岐ターゲットバッファーによる分岐予測といったPentiumをはじめとする第5世代のx86系プロセッサと同様のアーキテクチャを採用しており〔そればかりか、第6世代に当たるインテルPentium Proとの共通点さえ存在した。ただし、PentiumやCx6x86とは異なり2本の演算パイプは実装されておらず、シンプルなイン・オーダー実行1演算パイプ構成となっている。〕、ユニファイドキャッシュによる1次キャッシュを16KB内蔵する。このアーキテクチャにより、6x86の約50%のトランジスタ数で80%の性能を実現した。 そのため、このCx5x86は100MHz動作時にほとんどのアプリケーションで75MHz動作のPentiumプロセッサよりも優れた性能を発揮し、古く安価な486対応Socket 3マザーボード〔Pentium Overdrive を除いて、Pentium系のCPUを使用できなかった。〕のアップグレードパスとして、CPUコア電圧の対応〔インテル製486系プロセッサが使用しない3.45V駆動であるため、この電圧をサポートしないマザーボードでは電圧変換アダプタを併用する必要がある。〕やBIOSレベルでの対応、それにFSBの動作周波数などに一部制限があったものの、一定の成功を収めた。 このチップはi486の命令セットをほぼ完全にサポートしていたが、Pentium固有命令への対応はごく限られていた。面白いことに、このCPUの性能を強化するいくつかの特徴は、故意に無効化されていた。これは、出荷前に修正されなかったバグによる、潜在的な不安定性の恐れのためである〔これらの無効化された特徴は、自由にダウンロードできるソフトウェアで有効にすることができた。外部リンクを参照。〕。本CPUを使った、80386やi486SXを搭載するマシン用のCPUアクセラレータも数社から発売された。 なお、同じような名称のSGS トムソンST5x86とIBM5x86Cは、ファブレスであるサイリックスとの間でチップの製造委託契約を結んでいた両社が、契約条項に含まれていた自社ブランドでのチップ販売権により商標を変更して販売したものである〔IBMは自社製パーソナルコンピュータ製品の一部について、サイリックスが設計し自社で製造したプロセッサを搭載して販売していた。〕。 そのため、実質的には同一のものであったが、サイリックスが市場に投入しなかった75MHz版の入手性や、電圧条件などでわずかな違いがあった。 これに対し、同じSocket 3に対応していて同程度の性能を発揮し、しかも同じ年の終わりに発表されたAMD Am5x86とこのCx5x86 の設計を混同するべきでない。Am5x86は基本的には高速な486〔サイリックス製品のように新しいアーキテクチャを採用した設計ではなく、従来の486コアの製造プロセスをシュリンクして高クロック動作可能とし、1次キャッシュを増量して性能向上をはかった。〕であり、これらは本質的に全く異質なプロセッサである。 本チップのアーキテクチャを元にMediaGXが作られ、その後Geodeが生まれてネットブックやシンクライアントで使われていることからも先進的なアーキテクチャだったことがうかがえる。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「Cyrix Cx5x86」の詳細全文を読む スポンサード リンク
|